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人と人とのつながりを大事にしながらサードプレイスを作る

CAFE MISSING PIECE
オーナー 瀬川幸子さん

Profile

●福島県生まれ。
●ビジネスホテル勤務のあと、バリスタになることを目指し東京でのカフェ修行を経て、花巻出身のご主人と結婚と同時に夫の実家へ。2021年12月に自宅1階でカフェオープン。
● CAFE MISSING PIECE
岩手県花巻市桜町1丁目391-6

2023年取材(内容は取材当時の情報)

市内では希少なキッシュの店

花巻市南部、俗に笹間街道と呼ばれる県道103号線沿いで、旧花巻バイパスだった県道298号線の少し西側に新しい家が立ち並ぶ一角がある。
その一番道路に面した1軒がCAFE MISSING PIECEだ。ここを経営する瀬川幸子さんが好きな絵本「MISSING PIECE」(邦題「ぼくを探しに」シェル・シルバスタイン著・倉橋由美子訳講談社)から名付けたというかわいいお店は、2021年12月にオープンした新しいカフェ。美味しいコーヒーとキッシュが人気で、他にも白砂糖やマーガリン、ショートニング不使用のお菓子、バターや卵を使わないスコーン、自家製全粒粉ロールパンなど、安全、安心なメニューが並んでいる。
オープンしてからまだ日が浅いが、すでに常連さんたちが次から次へとやってくる人気店となっている。それは店のおしゃれな雰囲気やメニューのおいしさはもちろん、瀬川さんの人柄もまた人を惹きつけるから。

自分の店を夢に抱いたまま花巻へ

「ずーっとサービス業をやってきたんです」と言う瀬川さんは福島県白河市の出身。
高校を出てから地元のビジネスホテルでフロントの仕事をしていたそうだが、日本初のイタリア認定バリスタとなった横山千尋さんの存在を知り、自分もバリスタを目指したいと2007年に上京。輸入食材のチェーン店で経営するカフェに勤務したとのこと。そんな時に花巻出身のご主人と出会う。
「いつか自分の店を持ちたいと夢見ていたんですが、イメージしていたのは北関東あたりだったんですよ」と笑う瀬川さん。初めて新花巻の駅に降り立った時には、駅前に何もない風景にびっくりしたとのこと。
「当時は市内にカフェがそんなに無くて、『観光地なのにもったいないなぁ』と思っていました。東京時代にイメージしていた地域とは違いましたが、花巻でもいずれカフェを始めたいという気持ちは変わりませんでした」

しばらくご主人の実家で暮らした後、2015年に現在の場所に自宅を新築する。その時点で、最初から1階をカフェにするつもりで設計してもらったとのこと。

自宅新築により、夢を叶える場所はできた。後は開店までの資金を準備したり、カフェの仕事をおさらいするために、子どもたちが手を離れる年齢になるのを待って、北上にある全国的カフェチェーンに勤め始めた。キャリアを持つ瀬川さんは同店のマネージャーに。なんと販売個数で同店を全国1位にまで押し上げた。

お客様との距離が近い関係性が楽しい

結婚後独学でコーヒーコーディネーターやカフェマイスターの資格も取り、満を持して自分の店をオープンしたのはカフェチェーンで5年間勤めた後。オープンにあたり、高価なエスプレッソマシンや、自家焙煎機まで揃えたのだという。
「エスプレッソマシンはびっくりするぐらい高価でした。でも私にとってこれが命なので。自家焙煎機は、買ったもののまだ使えてません(笑)いつか自家焙煎やりたいですね」

オープン後は、カフェチェーン時代のお客様やママ友コミュニティの友達など地元の知り合いが後押ししてくれたと瀬川さんは語るが、それはいつも笑顔で垣根なく人と接する瀬川さんだからこそ。イベント出店で知り合った人たちも含め、お客様の8割がリピーターというところにそれが現れている。誘われて入った花巻青年会議所(JC)仲間も店の常連にもなっているという。
そんな、お客様との距離が近いという関係性が楽しいそうだ。
「自分の将来の夢を抱く年頃になった子どもに、親が夢を叶えているのを見せられて良かったなと思っています。家族には全面的に理解と協力をもらい感謝しています」

なるべく体に優しい県産食材を使いながら、人と人との繋がりを大事にしていきたいと語る瀬川さん。仕事と家庭以外の「居場所」サードプレイスで、「自分を探しにきて欲しい」と微笑んだ。

移住・定住ガイドブック「花巻ひと図鑑」より