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「なんとなく農業」から、人の営みを感じられる
「暮らし」へ

新規就農・農家カフェオーナー
平賀恒樹さん

Profile

恒樹さん●1977年花巻市生まれ。●東京の大学卒業後帰郷し、花巻市内の洋服店勤務を経て専業農家として就農。平成28年農家カフェ ファームプラス開店。●妻と子3人の5人家族。

農業への漠然とした興味

 花巻で生まれ育った小さい頃から、細々と野菜を作っていた祖母の手伝いを「案外面白い」と思っていた平賀さんだったが、周囲から「それじゃ食べていけないんじゃないか」と言われたり、大学を休学して行った西表島のサトウキビ収穫アルバイトの際に「農業はきつくて無理」と思ったり、それほど強い意思を持ち続けて農業の道に踏み出したというわけではなさそうだ。
 しかし帰郷後、友人からの紹介で手伝いに行った専業農家の仕事を通じ、「やり方次第で仕事にできそう」という思いに変わったとのこと。その後も手伝いの中で野菜づくりを学びつつ、きゅうりを手始めに自分でも作物を作り始めたのがスタートライン。結婚を挟んでそんな生活を10年続けた後、中古の家を買うことになった。その広さから将来の農家カフェを夢見始めた頃が大きなターニングポイントだったようだ。


寄り道の中から見えてきた

 大学時代に休学して訪れたのは西表島だけではなかった。アルバイトでお金を貯めて、本人が言う「自分探しの旅」にアメリカへも2ヶ月半行っているし、大学に復学した後も4年生になる前の春休みにメキシコへも2ヶ月行ってきた。大学に通いながらバーでアルバイトをした経験から、卒業後帰郷してからまずは接客を学ぼうと、洋服屋にも3年半勤めている。農家の手伝いを始めるまでは、ある意味寄り道だらけの歩みだった。大学を卒業した後に帰郷したのも、実は当時から付き合っていた中学時代の同級生の奥様からの希望だったらしい。
 しかし、様々な土地を歩き、流れのままいろいろなことを経験しているうち、徐々に「農業」に方向性が定まってきたのだと感じる。バーや洋服店での接客もだが、農家の手伝いをしていた頃、同時に花巻市内のレストランでアルバイトした経験も今のカフェ経営に生きている。
 寄り道しながら常に面白いと思った方向、より興味を感じた方向に歩みつつ、経験をうまく生かしながら、今も新しい道を発見し続けている。


人とのつながりで生まれる新たな道

 平賀さんと話していると、熱い情熱を感じるというより、肩の力が抜けて癒しすら感じる。それが新たな人とのつながりを生み、新たな道を生み出してきた。現在、自作の野菜を使って一緒にオリジナルドレッシングを作っている「どんまいプロジェクト」代表の小原努さんや事務局長の照井健二さんとのつながりもそのひとつ。誘われるまま花巻4Hクラブ(農業青年クラブ)へ入ったり、どんまいプロジェクトとして商品開発や地元温泉ホテルと「朝ごはんプロジェクト」を企画したりしてきた。
 クラウドファンディングを使って自宅にオープンさせた農家カフェでのお客様とのつながりからドレッシングや米菓子「どんまい」の新たな販路を開拓もでき、どんどん広がる仲間との新しい企画も生まれつつある。「面白いから仲間が集まる」「面白いからやってみる」というスタンスがまた新しい出会いを生んでいる。


ここには「豊かさ」「暮らし」がある

 平賀さん自身やどんまいプロジェクトには、よくあるようなビジネスプランや厳密な事業計画の存在は見えない。ビジネスの場面で語られる「効率」とか「利益生」ばかり追い求めているわけではないからだ。味噌づくりワークショップ開催も、都市部からの修学旅行生やグリーンツーリズムの方々を農家体験として受け入れているのもビジネスではない。たくさんの人たちに豊かな農家の暮らしを知って欲しいからだという。
 いつも家族と一緒に、マイペースな生活を大切に楽しみながら、ゆっくり、しかし着実に歩みを進める平賀さん。「この環境で一緒に子育てできる人とこれからもっと繋がりたいですね。ここにある豊かさを感じてもらいたい。ここでは人の営みや暮らしが実感できると思います」